ベーコン

燻製の豚肉です

「アルマゲドンの夢」/新国立劇場オペラ

スルーしてたけどおススメされたので観た。新国立劇場の新作オペラ。
作曲は藤倉大で、原作はウェルズのSF小説に基づく。

この世界は夢か現実か?新国立劇場が世界へ発信する衝撃の新作https://www.nntt.jac.go.jp/opera/armageddon/

とのことですが、概ねTwitterのみんなたちが言ってる感想と同じですね。
舞台美術と音楽はおもしろかった。舞台美術は今の人のモードめな感性に沿おうとしてる印象。端的にいうとかわいい。私はかわいいものが好きなので、「かわいい~(正の感情)」と思いながら観ていたのですが、とりわけ全体主義の表現に既視感があるという指摘もあり、まあそうだよねという感じ。こういう新作って「誰も見たことがない」が売りの場合に、「本当に誰も見たことがない表現」をすると何も伝わらなくなる。だから、「見たことがないっぽい、ちょっとは想像がつく表現」をうまく提示しないといけないのだが、結構お客さんに親切になってしまい、それが「既視感」として裏目に出てしまった感。でもかわいいかったから目には楽しい。

音楽もたぶん良かった(たぶん、というのは観劇時点で藤倉大をほぼ聞いたことがなかったから)。合唱と打楽器の使い方がおもしろい。あと思ったより聞きやすかった(感想が勉強不足すぎる...)。

全体主義の台頭とそれに翻弄される男女という主題で、見せたいことをわざと表層的に、そして露悪的に作っているんだけど、その作りこみがやや半端なので、「今私が受け取っている情報は(作り手の想定と比べて)多すぎるのだろうか、それとも読みとれてなくて少なすぎるのだろうか...」と思ってしまった。「これはギャグなのか、マジなのか、そもそもその意味すらないのか」と悩みながら観た。作り手と聴衆間でのコミュニケーション不全というか、あんまりよくないモヤモヤ感が残ったなあ。観客にこの気持ちを作り出してやろうと狙ってやっていたら相当すごいけど...。もう少し作品対して上手に文句言わせてほしかった。オペラという土壌において、初演ものは作るほうも観るほうも難しい。ああでもやっぱりいろんなことを深読みしすぎなんだろうか...観たままを観ていれば.......。

ということを考えたので、総じて良い作品だったのではないかと思います。海外キャストも来られて、幕が上がってよかった。スルメ作品だからまた再演してほしい。今度は1階席とかで見たい。