【総評】
「以前にも観たことある演出だし...」と思ってオペラをパスした覚えが多かったものの数としては例年同様にあちこち出かけている。オペラやオーケストラや室内楽だけでなく、2.5次元演劇やお笑い、ミュージカル、ストレートプレイ、ジャニーズやケチャなども観られたのがよかった。
いわゆるクラシック音楽のジャンルでいうと、プッチーニ作品が上演される際は意識して劇場に足を運んでいた(5月に「ラ・ボエーム」を、8月に「トスカ」を所属のアマチュアオーケストラで演奏する、という事情があった。12月には「蝶々夫人」も演奏した)。藤原歌劇団「トスカ」は、タイトルロールを演じる小林厚子さんによる隙のない演技と歌が圧倒的。のちに所属オーケストラでもトスカを歌ってもらえることになり嬉しかった。ベタに良かったのは小澤征爾音楽塾の「ラ・ボエーム」。若手出演者の奮闘が話の筋にも合っていた。自動的に泣いてしまう作品。「トゥーランドット」は、演出に賛否あったものの自分は楽しめた。美術担当だったチームラボはファインアートでなく舞台美術の領域でもっといろいろやったら、舞台美術にできることそのものを押し広げてくれるのではないかと思う。やってほしい。
他、「ラ・ボエーム」つながりでミュージカル「RENT」や「ムーラン・ルージュ!」を観たり、「コッペリア」「ホフマン物語」をE.T.A.ホフマンの『砂男』とのつながりを感じながら観られたのは自分の選択ながら面白い鑑賞体験だった(だから何という感はあるが)。それ以外は、「二人のフォスカリ」「シモン・ボッカネグラ」など「『椿姫』じゃないほうのヴェルディ作品」を2つ観ることができた。室内楽など小さなコンサートも縁あって例年にない頻度で足を運べた。アマチュア演奏者への指導においてお世話になっている先生方が、パフォーマーとして室内楽分野で活躍されている様を見るのはしみじみとした良さがある。また、ハーゲンカルテットは非の打ち所が一点もない演奏だった。
加えて、夫の住むミュンヘンへ遠征(帰省)し、現地でオペラが観られたのは観劇生活における大きな出来事だった。しかも演目が因縁のトリスタンとイゾルデだった。とにかくオーケストラがうまく、歌手の声が(表現力を保ったままで)デカかった。旅行先として足を伸ばしたヴェローナの野外オペラも楽しかった。日が暮れていくと舞台の見え方がどんどん変わっていく様子は現地でないと味わえないものであった。
また、今年は一番好きなミュージカルである「ジーザス・クライスト・スーパースター」(以下、JCS)の劇団四季による再演があった。これまでに観たことなかったジャポネスク・バージョンということもあり、迷いなくチケットを入手して3日連続で観た。2023年に32歳の自分がJCSで佐久間仁さん演ずるユダを見ているのわけわからん(前にこういう勢いでJCSを見ていた時はたしか26歳で無職で全国公演の追っかけをしていたし、佐久間さんはユダを演じていた)。
展示については、もう仕事がどうにもならず「行きたい展示すべてに辿り着かず会期終わる...」と思っていたが、2023年とほぼ同数の企画展・常設展を観ていた。アーティゾン美術館の「ABSTRACTION」、国立新美術館の「蔡國強」あたりが強く記憶に残る。が、単に作品が大量にあった or 作品がすごくデカかったから覚えているだけかもしれない...。今年は中目黒や六本木や表参道のギャラリーにもっと行きたい。
そうこうする一方で映画はほとんど観ていない。岸辺露伴よかった〜
【演奏活動について】
前述の通り、今年は「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」の公演に参加させてもらった。プッチーニの主要曲を作曲順に3曲演奏でき、表現の広がりをオーケストラの中で感じられたのはまたとない経験だったと思う(だんだん「誰も聴いたことがなかった(であろう)表現」が楽譜上に増えていく...)。また、トスカ三幕におけるチェロアンサンブルや、ブラームスのピアノトリオ、メンデルスゾーンのソナタ、他オケ中ソロなどプレッシャーのかかる本番が多かった。うまくいったりいかなかったりした。緊張するのはこりごりだ!もう二度とやらん!と演奏直後は思うが、こういう機会を見ると楽器上達の一助としたい意図で飛びついてしまうから同じ思いをまた2024年もするんだろうな。こうした本番のおかげで鑑賞の幅も広がったのでここに記しておく。
【コンサートなど】
鈴木恵里奈/松本重孝/東フィルなどによる
藤原歌劇団公演「トスカ」
東京文化会館
アレホ・ペレス/東響/レーマンらによる
新国立劇場オペラ「タンホイザー」
新国立劇場
ディエゴ・マテウス/新日フィル/ダニエル・クレーマーらによる
二期会オペラ「トゥーランドット」(ベリオによる第3幕補作版)
東京文化会館
マルク・ルロワ=カラタユード/東響/ローラン・プティらによる
新国立劇場バレエ「コッペリア」
新国立劇場
Travis Japan Debut Concert Tour 2023 THE SHOW 〜ただいま、おかえり〜
ぴあアリーナMM
マルコ・レトーニャ/フィリップ・アルロー/東響らによる
新国立劇場オペラ「ホフマン物語」
新国立劇場
ディエゴ・マテウス/デイヴィッド・ニース/小澤征爾音楽塾オーケストラなどによる
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIX「ラ・ボエーム」
東京文化会館
ミュージカル「RENT」
シアタークリエ
Ensemble puls+ vol.6/ハイドンのピアノトリオNo.25,ドビュッシーのピアノトリオ,ブラームスのピアノトリオNo.1
渋谷ホール&スタジオ
浅利演出事務所「オンディーヌ」
JR東日本アートセンター 自由劇場
プレトニョフ/東フィルによる
ラフマニノフ「岩」、「死の島」、シンフォニック・ダンス
サントリーホール
ジョナサン・ノット/東響/クリスティーン・ガーキーらによる
「エレクトラ」
ミューザ川崎シンフォニーホール
マウリツィオ・ベニーニ/エミリオ・サージ/東フィルによる
新国立劇場オペラ「リゴレット」
新国立劇場
劇団四季「クレイジー・フォー・ユー」
KAAT 神奈川芸術劇場
高田智士×ドイツ歌曲×高柳圭ピアノ×清水新vol.2
マーラー「さすらう若人の歌」、ブラームス「6つの小品」op118、シューマン「リーダークライス」op24 ほか
国分寺市立いずみホール
沼尻竜典/神奈川フィル/田崎尚美らによる神奈川フィル Dramatic Series
R.シュトラウス「サロメ」
横浜みなとみらいホール
ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル
帝国劇場
劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』[ジャポネスク・バージョン]
JR東日本アートセンター 自由劇場
(3回観た)
ミュンヘンオペラフェスティバル2023「トリスタンとイゾルデ」
Bayerische Staatsoper
アレーナオペラフェスティバル「セヴィリアの理髪師」
Arena di Verona
第45回記念 芸能山城組ケチャまつり
新宿三井ビルディング55HIROBA
素敵な仲間たちと音楽を 17th
ブリッジ:ミニチュア・トリオより、小品集
ボウェン:幻想曲、三つの二重奏曲
ブリス:ピアノ四重奏曲
加賀町ホール
ブラームスの声楽アンサンブルと民謡
ブラームス:3つの四重唱曲、バラードとロマンスほか
古賀政男音楽博物館 けやきホール
劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演
品川プリンスホテル ステラボール
chocolate 夏コン2023
ミューザ川崎 音楽工房
田中祐子/伊香修吾/東フィルによる
藤原歌劇団「二人のフォスカリ」
新国立劇場
ジョナサン・ノット/東響/カテジナ・クネジコヴァなどによる東響定期演奏会
ドビュッシー(ノット編曲)/交響的組曲「ペレアスとメリザンド」
ヤナーチェク/グラゴル・ミサ
ミューザ川崎シンフォニーホール
ハーゲン・カルテットによるハーゲンプロジェクト2023 第3夜
モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》
ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130+大フーガ 変ロ長調 Op.133
トッパンホール
大野和士/ピエール・オーディ/東フィルによる
新国立劇場オペラ「シモン・ボッカネグラ」
新国立劇場
~上岡敏之×東京二期会プロジェクト I ~
モーツァルト「レクイエム」/ ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」
東京芸術劇場
ルミネtheよしもと
さくら弦楽四重奏団2023
バルトーク:弦楽四重奏曲 第6番 Sz.114
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」
ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 op.133
ティアラこうとう 小ホール
【展示】
つげ義春と調布@調布市文化会館たづくり 2階
マン・レイと女性たち@神奈川県立近代美術館 葉山
パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂 / Art in Box ーマルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後 @ アーティゾン美術館
建物公開2023 邸宅の記憶@ 東京都庭園美術館
プレイプレイアート展@ ワタリウム美術館
ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会@ 森美術館
ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ@ アーティゾン美術館
今井俊介 スカートと風景@ 東京オペラシティ アートギャラリー
寺田コレクション ハイライト@東京オペラシティアートギャラリー
蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる @ 国立新美術館
Städtische Galerie im Lenbachhaus
BIENNALE ARCHITETTURA 2023 18TH INTERNATIONAL ARCHITECTURE EXHIBITION
テート美術館展 光@国立新美術館
川瀬巴水 旅と郷愁の風景@石川県立美術館
それは知っている:形が精神になるとき@金沢21世紀美術館
鈴木大拙館
KAMU
AWT FOCUS@大倉集古館
ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室@DIC川村記念美術館