ベーコン

燻製の豚肉です

「こうもり」/新国立劇場オペラ

新国立劇場にて。今度所属オーケストラにて序曲をやるので観た。
実をいうと前に一度同じやつを新国で観ている。調べたら10年近く前でこわかった...。

前に観たときは学生で、3階だか4階だかの見切れ席だったのだが、今回は1階4列目(最前)。当時ほぼ見えなかった舞台装置がちゃんと見えてよかった。1階席で観るとなんとなくクリムトやらミュシャやら、あのあたりのモダンん~なデコりを模していることがわかる。舞踏会の冒頭のシーンはクリムトのkissまんまの壁画がありましたな。時代的にはちょっとズレてるけど世紀末前後の芸術ということでいいのかしら。10年前に見ても今見てもまったく古びなくておしゃれやったな。

演出は「新しい様式」とのことでしたが、2幕が前より合唱少なめかな?と感じる程度でした(そもそも前に観たの10年前だから記憶が定かではない)。もっと大幅にいろいろ変わってるんかと思っていたら、結構ふつうのこうもり。3幕序盤のフロッシュの一人コントでコロナに触れるかなと思ってたけど、特になし。「新しい演出様式」はそれを逆手にとった演出ではなかった。そりゃそうか。1幕でのロザリンデの「あの日本人テノール!(字幕)」も3幕フロッシュの「Sho~Chu~(焼酎)」も変わってなかった。このあたりは字幕の関係もあるからしょうがないけど、役者(歌手)がアドリブでふざけ倒すところが見たいな。

気になったことといえば、オケ内の時差。前方席の端に座っていたからか、たまに楽器同士のズレが苦しかった。こうもりは曲が良くできすぎているから、きちんとやるのはすごく難しいんだな~(ましてやピットの中で...)。

アマオケではよく本編内の酒イメージから「適当にやるのがこうもり」みたいに語られがちだし、自分もそうやって演奏するのがよいと思っていた。でもそうじゃないんだな。特にスコアのできがよい曲を演奏するには、自分の音やアンサンブルをピカピカに磨き上げないといけない。そこにたどり着いてから、「適当にやっているっぽい」を上手に演出する必要がある。適当にしかできないのと、わざわざ適当っぽくすごくうまくやるのはまったく別...(書いていてお腹痛くなってきた)。わざとボロボロに作っている駄菓子屋も耐震構造はしっかりしていないといけない。そういう意味で学びの多い舞台だった。

それにしてもキャストがすごく良かったな。特にロザリンデ役は素晴らしい。正統派ヒロイン・赤レンジャー系だけど変幻自在。チャルダッシュはそういうシーンでないのに泣いてしまった。あんなん歌って淀みがひとつもないのがすごすぎる。客を我に返させない、舞台に釘付けにさせる、磨き上げられた歌だった。

ところで、外国人歌手に雑に日本語を喋らせて笑いをとるのは反則感ある。笑っちゃってくやしい。