ベーコン

燻製の豚肉です

2021年に観に・聴きに行ったものたちのまとめ

【総評】

引き続き、流行病に翻弄される1年だった。観た公演の翌日の興行が中止になって自動的に自分の行った公演が結果的に千秋楽になってしまったり、来週の同演目の2枚目のチケットが払い戻しに...なんてことも複数あった。「推しは推せるうちに推せ」という先人たちの言葉を胸に、観たいものは総じて観られたと思う。

 舞台関連では宮本亜門演出の「魔笛」が、2021年の中で一番良かった。整合させることの説得力、そしてその説得力で展開する舞台は強烈に人の心を動かすことができる。舞台が持つ力を感じた2時間半だった。私の好きな舞台を強烈に肯定してくれたようでうれしくなった。説得力の重要性は、アレックス・オリヒ演出の「カルメン」を観ても頭をかすめた(こちらは反省会的に記事にした)。斬新でかっこいいもの、およびよくわからんものは現代美術で見慣れていると思っていたが、それらは私がわからないなりにも作品の中には必然性があって成り立っていた。それが見えない表現は観者がマジで結構苦しい。わからないで苦しいのではなく、作品それ自体がゆらぎ、視線を委ねられないことが苦しい。とはいえ、長時間そういう苦しい気持ちになって、演出家のインタビュー見たりなど作品に入れ込んで、やっぱりなにをどう説得してえのか全然わかんねえなと思う経験は今後も年一回くらいはしたい。

 演奏で良かったのは新国オペラの「ルチア(ランメルモールのルチア)」。映画を観るように号泣した。演出や舞台の美しさもあるが、何より(歌手の演技含む)演奏が刺さって揺さぶられたように思う。1835年のオペラでこんなに号泣することある? 美しいフィナーレのあとにじわりと拍手が広がっていったのは、私だけが号泣していたからではないことの証である。あとはCello Ensemble XTCの演奏会。個々の奏者の演奏能力の高さと、当て書き的に寄り添いつつも立ちはだかる楽譜のヤバさ、そしてそれを乗り越えパフォーマンスにしていたのは印象的。個性豊かな編曲の中でつんくLOVEマシーンは現地で撮影OKだったこともあり、録画して何度も観た。「楽しそうな演奏」は聴いていて楽しいが、楽しそうに演奏するだけでは絶対に成り立たない。楽しそうっぽく演奏するには、そのように観者に感じさせるための演奏力が必要。それは気持ちの問題でなくて(もちろん多少は気持ちの問題もあろうが)、音程を絶対に外さないとか、適切な弓のコントロールとか身体の問題がほとんど。そういうことを肝に銘じるために、今でも折に触れて録画を観る。

 あとは、唐十郎を2回も観られたのが良かった。アングラに限らずストレートプレイはもっと観たいところだが、自分が演奏するという都合もあり、どうしてもオペラ・オーケストラほか音楽公演に偏る。このペースだと年2回くらいを目指していくのが妥当か。

 劇場通いが増えたこともあるにせよ、展示関係はいずれも事前予約必須なところが増えて、ぶらっと行けるところが少なかったのもあってかなり厳選。横尾忠則とロニ・ホーンが良かった。横尾忠則の圧倒的な画面構成力・世界のブレなさはどの絵も一貫しており、それらのデザインへの応用を興味深く見るとともに、単純になんか元気が出た。ロニ・ホーンは単にめちゃくちゃ好みの作家だった。冷たく、かつ湿度のあるわびさび。

 映画はもう、なんといってもポンポさん。ポンポさんが一番。何度でも見返したいけれど、それはもっともっと折れてしまったとき、すなわち私の人生の大事なときにとっておく。そんなかけがえのない90分だった。

 

【コンサート】

新国立劇場オペラ プッチーニ「トスカ」
1/23 指揮:ダニエレ・カッレガーリ 演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ 
オーケストラ:東京交響楽団

劇団四季「The Bridge 〜歌の架け橋〜」
1/27@四季劇場

劇団四季「The Bridge 〜歌の架け橋〜」
2/10@四季劇場

NHK交響楽団 2月公演@東京芸術劇場
2/13 指揮:熊倉優 Vn独奏:イザベル・ファウスト
スメタナ/「売られた花嫁」-3つの舞曲、シマノフスキ/Vn協奏曲 第1番、ドヴォルザーク/交響曲第6番

オルガンと朗読で聴く「幻想交響曲
2/20  パイプオルガン:大木麻理 語り:山科圭太

都響スペシャル2021@東京芸術劇場コンサートホール
2/28 指揮:大野和士
サン=サーンス/死の舞踏、リスト:死の舞踏〜「怒りの日」によるパラフレーズ
コダーイ/ガランタ舞曲、ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」

新日本フィルハーモニー交響楽団 第631回定期演奏会@サントリーホール
4/8 指揮;尾高忠明 Vn独奏:山根一仁 Sop:砂川涼子
モーツァルト/Vn協奏曲第5番「トルコ風」、マーラー/交響曲第4番

新国立劇場オペラ ドニゼッティ「ルチア」
4/23 指揮:スペランツァ・スカップッチ 演出:ジャン=ルイ・グリンダ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団

紀尾井ホール室内管弦楽団 第126回定期演奏会
5/22 指揮:垣内悠希 Vn独奏:玉井菜採
モーツァルト/歌劇「イドメネオ」抜粋、Vn協奏曲第4番
ストラヴィンスキー/ダンス・コンセルタント、「火の鳥シェーファー編、室内オーケストラ版)」

浅利演出事務所「夢から醒めた夢」
5/25@自由劇場

劇団四季「CATS」
6/1@キャッツ・シアター

浅利演出事務所「夢から醒めた夢」
6/5@自由劇場

新国立劇場バレエ グラズノフ「ライモンダ」
6/12 指揮:アレクセイ・バクラン オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ライモンダ:木村優里、ジャン・ド・ブリエンヌ:井澤 駿

新宿梁山泊 第70回公演「ベンガルの虎」@花園神社
6/23 作:唐十郎 演出:金守珍

新国立劇場オペラ ビゼーカルメン
7/17 指揮:大野和士 演出:アレックス・オリエ 
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団

ジーザス・クライスト・スーパースター in コンサート@東急シアターオーブ
7/18 演出・振付:マーク・スチュアート
ジーザス:マイケル・K・リー イスカリオテのユダ:ラミン・カリムルー

パスカル・ヴェロ×仙台フィル
7/22 指揮:パスカル・ヴェロ オルガン:今井奈緒子 合唱:東京混声合唱
サン=サーンス/交響曲第3番「オルガン付き」、ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」、ラコッツィ行進曲、ドビュッシー/夜想曲

二期会オペラ ベルク「ルル」
8/29 指揮:マキシム・パスカル 演出:カロリーネ・グルーバー
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団

二期会創立70周年記念公演 モーツァルト魔笛」@東京文化会館
9/8 指揮:ギエドレ・シュレキーテ 演出:宮本亜門
オーケストラ:読売日本交響楽団

東京フィルハーモニー交響楽団 第956回オーチャード定期演奏会
9/19 指揮:チョン・ミョンフン
ブラームス/交響曲第3番、第4番

東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ第124回
10/22 指揮:ジョナサン・ノット
デュティユー/交響曲第1番、モーツァルト/レクイエム

フレンドシップコンサート@王子ホール
11/3 メランデ・ピアノ三重奏
メンデルスゾーン/ピアノトリオ第1番、アレンスキー/ピアノトリオ第1番、フランク・ブリッジ/幻想曲

Cello Ensemble XTC @トーキョー・コンサーツラボ
11/12 
阿部俊祐/レクイエム 〜井伊準の思い出に〜、つんく/LOVEマシーン

劇団四季劇団四季アンドリュー・ロイド・ウェバーコンサート 〜アンマスクド〜」
12/10@Brillia HALL

劇団四季劇団四季アンドリュー・ロイド・ウェバーコンサート 〜アンマスクド〜」
12/22@KAAT

さくら弦楽四重奏団2021@ティアラこうとう小ホール
12/24
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第6番、第7番、バルトーク/弦楽四重奏曲第2番

COCOON PRODUCTION 2021 「泥人形」
12/25 作:唐十郎 演出:金守珍

 

【映画】(順不同)
あのこは貴族
映画大好きポンポさん
劇場版呪術廻戦0
のさりの島
鬼滅の刃 無限列車編

 

【展示】(順不同)
SURVIVE EIKO ISHIOKA@ggg
谷口奈津子 個展 「庭と侵略者」 Mograg gallery
ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展@東京オペラシティ アートギャラリー
眠り展:アートと生きること @東京国立近代美術館
20世紀のポスター@東京都庭園美術館
杉浦非水 時代をひらくデザイン@たばこと塩の博物館
アナザーエナジー展@森美術館
GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?@東京都現代美術館
イサム・ノグチ 発見の道@東京都美術館
ライゾマティクス_マルティプレックス@東京都現代美術館
モネ-光の中に、ロニ・ホーン 水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?@ポーラ美術館