ベーコン

燻製の豚肉です

STARS展:現代美術のスターたち-日本から世界へ/森美術館

STARS展に行った。おなじみの現代美術のスターたち、というコンセプトだったのだが
なんというかものすごい「こなれ感」だった。知ってる作家たちの知ってる(ような感じの)作品が出てくる。物ひとつひとつは面白いんだけど、みんな芸風を知っている作家だから意外性がない。

そもそも意外性がないことも意外ではなく、「あ~そういう感じだよね~」と思いながら部屋を巡った。驚きがあるだけがアートではもちろんないのだが...。1990年代の作家たちはもうすでに「スター」というフレッシュ感はなく、どちらかというともはやレジェンド。「教科書の中の人たち」で、日本から世界へ「もうすでに行っている人」であった。

強いて言うなら村上隆の新作「原発を見に行こう」はちょっと面白かった。あと宮島達男の海のインスタレーションは芸風同じだけど見え方ちょっと違った。あとはデカかったり色がすごかったりする作品が印象に残る。スターたちでもあんまり予定調和だと美大の卒展と似たような戦いにもなりうるのはちょっとウケた。
ちなみにSTARS展の中で一番感心したのは、各作家の生い立ちコーナーに書かれていた杉本博司の言葉。下記に引用する。作品じたいに既視感があっても、こういう言葉にハッとさせられることがあるので展示空間に足を運ぶのをやめられない。

人間の眼にはシャッターが無く、必然的に長時間露光となる。
人間の眼の露光は、新生児が眼を開いたときから、人生の最期にその眼を閉じるまでの、ひとつの長い過程だ。
われわれは生まれてから死ぬまで、網膜に写し出される逆転した虚像に頼りながら、自己と世界の距離を止むことなく測り続けるのだ

 

「新鮮な驚き」でいうならMAM projectが良かった。
音の出ないチャイ5は、音を完全に脳内補完できちゃうので全然本来の楽しみ方ができなかった。
布のインスタレーション森美術館の中で一番尖ってた。
古着をぐるぐる巻いて塊にして大量に置くと死体に見える、という基本着想があって、
その「死体たち」を波のように積み上げて、十字架を置き、神やキリストなどの人形を置いた作品。これだけでもかなり挑発的なんだけど、人形の顔が激怖い。キャプションを読むと「人形は、作家が旅の途中で出会った老人の手によるもので、彼が作る人形はすべて同じ顔。しかもそれはその老人の顔だった」みたいな恐ろしいことがサラッと書いてあって笑ってしまった。サイコすぎる。その後「その老人は純朴で~」と性格への言及があるのだが、騙されるな。