ベーコン

燻製の豚肉です

ウィーンフィルウィークインジャパン2020/サントリーホール

この騒動でなきゃ行かなかったであろう、ウィーンフィルウィークインジャパン。なんでかというと通常時のチケット戦争がダルいからである。このご時世でギリギリに決まり、おそらくこのご時世によってチケット余りもあったので行けた。
プログラムは以下の通り。
プロコフィエフ/「ロメオとジュリエット」より、「モンタギュー家とキャピュレット家」「少女ジュリエット」「仮面」「ジュリエットの墓の前のロメオ」
チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」
結論としてめちゃくちゃうまくて良かった(ひでえ感想だ)。各楽器の音の解像度が高くて情報が多い。2ndFgの音とかがバシバシ聞こえてくるとこんな響きになるんだな。聞かせる、というか客の耳をこじ開ける演奏があることを初めて知った。
オーケストラのサウンドの充実はさることながら、指揮のゲルギエフが面白かった。昨年、マリインスキーとの来日時にマゼッパを聴いたときは「棒が短け~」「Youtubeと同じ震え方だわ~」って思ったんだけど、ゲルギエフの棒はそれよりも2拍目以降がどっかいっちゃってるところが見どころだと思う。勝手にやれってことなのか、でもそれで音楽を運べるウィーンフィルはすごい。かと思えば、ソロをめちゃくちゃ管理する棒を振っていたり(自分がソロ奏者だったらやだな~やりづらそう)。私のリテラシーだと動きから意図が全然わからんくて、わからねえのが良かった。今度指揮の先生に聞いてみよう。
大好きなプロコフィエフロメジュリは選曲がすごくいい。お得版って感じ。ロメオとジュリエットが出会う場で流れるテーマは美しくも悲痛で、解釈一致だ~と思った。愛する者との死別は美しいだけではないのだ。ピアノ協奏曲は予習しないで行ったら正解がまったくわからなかった。とにかくピアノの音がすげえでかくて、それがすごくて笑えた。悲愴は棒とオーケストラのギリギリのせめぎ合いが一番映えた曲だった。ギリギリのチャイコフスキーが書いた遺書。1楽章の耳を澄まさないと聞こえないほどのクラリネットソロで、「人を驚かせるのはフォルテではなくピアノの音」というのを心に刻んだ...。
後半の開演前に挨拶があり、曲終了後は新型コロナウイルスによる死者への黙祷をしてほしいと。悲愴終楽章でゲルギエフのタクトが降りていくとき、同時に客電と舞台明かりも落とされていった。残った響きが消えて、奏者も暗くぼんやりとしていくホール内は、儀式的な雰囲気に満ちていた。賛否両論はあれど、私は行って良かったなと思った。