ベーコン

燻製の豚肉です

石岡瑛子を浴びた

もうだいぶ前になるけど、東京都現代美術館ggg石岡瑛子氏の展示を観た。感想をブログの下書きにしたためていたのを思い出したので書く。短期間に瑛子を浴びた。

 

東京都現代美術館石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/

ggg「SURVIVE 石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」

https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000761

  

みんな言っていたけど、まずその才能に圧倒される。ここでの才能というのは、モードを捉える力とか、クライアントの意図をバズるように表現するとかそういうアンテナ的な面もあるんだけど、彼女のならではの力は「徹底的にこだわる力」だと思う。そもそも、いわゆる一流とされる人は、みんなそうやって細部をギチギチに詰められるスキルと、細部の粗を取りこぼさない目を持っている。

石岡瑛子の「細部見る力(りょく)」を表した展示物が、彼女がアートディレクターだったときに担当した広告の赤字入りゲラ刷り。この写真のここのエッジを立てろ、ここはぼかし気味で、ここを見せないでなんの意味がある、みたいな思想強めの赤字がびっちり入っていた。よく知らないんですけど、これ広告ならではなんすかね?  私は出版系の者なので、あのギチギチ赤字が広告ならではのもんなのか瑛子ならではのもんなのかわからなかった。それでも、これまで10年近く印刷物を眺める仕事をしてきて、あんなに圧のある赤字をゲラに書き込んだことないし、書き込む人を見たことない。よって、めちゃくちゃ怖かった。社内にああいう先輩・上司がいても怖いし、自分が印刷所で仕事していてああいう戻しがあったら胃が痛くなる。そんな気持ちにさせるゲラ刷りの展示だった。

「ゲラ刷り怖い」が先行してしまったが、何が言いたいかというと、印刷所の現場作業員に対してもそういう容赦のないところに「細部見る力」「細部こだわり力」を感じた。普通は印刷所とか、後ろのスケジュールとか予算を気にして「あと一校」をもらいたくてももらえないこともある。でも、彼女はやってのける。自分が思う最高の表現をするために....。

とここまで書いて思うのは、「デザイナー」という紹介のされ方をして、仕事もデザイン的ではあるけど、彼女は職人・アーティストなのだな、ということ(元がアートディレクターではあるからそりゃそうなのだが)。アートディレクターと一口に言っても、ディレクター系の人もデザイナーみたいな人もアーティストみたいな人もいるだろうが、彼女はアーティスト系の仕事人だと思う。私はもっと広告の仕事や鬼のような赤字入りゲラを読みたかったが、展示じたいはggg都現美も、彼女をアーティストのように見せてまとめていた。全く違和感なかったし、そう見られたい人なんだろうな。